「武」ではないが胸がスーッとした話。
キリスト教系の私立小学校で、当時としては珍しく中高と同じ教科担任制だったので、担任の先生に教わるのは国語と社会だけで、算数、理科、体育、音楽、図工、聖書は別々の先生だった。
その中で、図工の先生の価値観の押しつけが激しくて、あるテーマで自由に絵を描くはずなのにちょっとでも自分の考えと違うとその場で画用紙を破られて、結局は皆ほとんど同じような絵を描かされるような、無意味な授業だった。
図工と音楽は、その道から専門家を講師として雇っていて(私立はそういうことができるそうだ)、児童心理などはまったく無頓着な人のようだった。
ある日の授業で「家族」というテーマで自由に描けということになったが、相変わらず同じような価値観の押し付けをしてきて、祖父母との思い出を描いていたら
「何なのこの絵は!ふざけてるの!」と
破ろうとしたので
「やめてください。祖父母との大切な思い出なんです」と初めて抵抗した。
その態度に先生は「あたしの授業に文句があるなら出て行きなさい!」と激怒し、私を教室を追い出した。
ちょうどそこに担任が通り掛かって事情を聞かれたのでこれまでのこともすべて話した。
担任は図工の先生に掛け合ったが
「そんなふざけた絵を描いている子に教えるつもりはありません」などと息巻いていた。
担任の先生は
「じゃあ、教室に戻ってその絵を完成させて、私のところに持って来なさい」と私を教室に戻した。
絵を描き上げて先生に持って行くと
「この絵を先生に預けてくれる?」と言い、そのまま渡したら、先生はその絵を県の美術コンクールに内緒で出展してくれた。
結果は金賞、全国コンクールにも出品されて、そこでも金賞を獲った。
後日、そのことが朝の礼拝で発表され、壇上で表彰されて拍手喝采を浴びた。
その件が関係するのかはわからないけど、図工の先生は翌年は別の先生に替わっていて、楽しみの授業へと変わった。