今年、俺は成人式だったんだが、どうにも風が強い日で雨が降らなくて良かったーとか思ってた。
で、親戚に着物姿をお披露目したり何だりで、タクシー使って家に帰ったら、
なんか近所のおばちゃん達が、うちの玄関でうなってたんだよ。「どうしたんですか？」って聞いたら、
「あれ……」って言われて、お向かいさん(ちっちゃい旅館)の屋根を見たら、
トタンみたいのがビタンビタン魚のごとくのたうちまわってた。風で看板でも飛んできたのかなとかおもた。

「日曜日だから瓦屋さんも呼べないし、若い子が帰ってきたら屋根に上ってもらおうかな……」
とかおばちゃんは言ってるんだけど、どうみても女の子がどうにか出来るレベルじゃない大きさだったからさ、
「そんなら俺がいっちょ上りますよ」って言ったんだ。フラグかもしれないし。
「着物大丈夫なの？」って言われたけど、飲みの約束とかあったから、着替える時間も惜しかったし、
そのままはしごでずいずい登った。で、現場到着。
うん、これは無理。ペンチでどうにか出来るレベルじゃないっていうか屋根が剥がれてる。
流石にこれは素人がどうこう出来るもんじゃないと思って、俺は結局消防署に連絡することにした。
本当はこういう作業はやらないらしいんだけど、
日曜日で店が休みで、下手したらﾀﾋ人も出かねないサイズって事で、特別に応急処置だけしてもらえた。

おばちゃんはそういう発想がなかったらしく、俺が電話してあげたらえらく感激されて。
まあ俺自身は何にもやれてないわけで。着物のすそが軽く破けただけなわけで。おばちゃんにもそう言ったんだけど、
「もうね、私心細くてぜんぜんそういうこと思いつかなかったの。貴方がいてくれて、本当に助かったわ」
と、涙ながらにお礼を言われて、なんかその後ナポレオンとか言う酒を頂いた。

酒がもらえたってのはちょっと嬉しかったけど、それ以上におばちゃんとかに怪我が無くて本当よかったと思う。
フラグなんてなんも無かったし、40万ぐらいした着物破いたけど、あれだけお礼言われれば、悔いは無い。