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303 :鬼女タウン 2013/01/31(木) 10:20:31 ID:uEJ668FM0
夫の父方の祖父は、田舎の人だ。
若い頃はイノシシ狩りが趣味だった。
祖父の家には紀州犬がたくさんいた。

猟犬のなかに、シロと呼ばれるオスの紀州犬がいた。
姿かたちが美しく品評会で何度も優勝したそうだ。
シロは人間には従順だったが、ひとたび狩りになると一変。
山のなかでは恐れを知らず勇猛果敢。普通は人間が銃でしとめるところ、シロは
最後イノシシにとどめをさすところまで、一匹でできてしまう犬だったそう。

祖父は兵庫県在住。
大きなイノシシを何頭もしとめたシロの名声は、隣の岡山まで届いた。

義父は当時、小学生だった。シロはとても義父になついてた。
義父もシロを可愛がっていて誇りに思っていた。

ある日、岡山のお金持ちから、シロを売ってほしいという話があった。
いまから五十数年以上前のこと。
当時のお金で、最高級のテレビが買える値段だった。
シロは売られてゆき、祖父の家には大きなテレビがやってきた。
義父は泣いたそうだ。

それから何週間もたったある日のこと。義父が自宅近くのあぜ道を歩いていると、
田んぼのなかに汚れた白い犬がうずくまっているのを見つけた。
義父に向かって弱々しく尻尾を振っている。
シロだった。
遠く岡山から兵庫まで、いくつもいくつも山を越えて帰ってきたのだ。
結局、シロは岡山に戻された。
すでに代金をテレビに使ってしまっていたので、そうせざるを得なかったそうだ。

昔と今では犬の飼い方が違うのかもしれないが、シロが不憫で仕方がない。
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