日. 11月 24th, 2024




530: おさかなくわえた名無しさん 2020/08/03(月) 06:56:39.87 ID:bq/nhNxd
かつてのお見合い相手(A子)から会ってくれないかと頼まれた。 
俺の勤務先とA子の勤務先は取引関係にあった。
正確には、俺の勤務先が元請けな。 
A子の勤務先のB社長が俺を気に入ってお見合いを持ちかけてきた。
俺は独り身だから喜んだよ。 

当日現れたA子は何故か不機嫌だった。そして開口一番こう言い放った。
「私、彼氏持ちなんです」と。
うちの社長がB社長にどういうことかと詰め寄っていた。 
当然、お見合い話はパー。
怒りが収まらないうちの社長はA子の勤務先との取引を切った。 
A子に指定された場所は、隣市にあるホテルのレストランの個室。
もちろんA子のおごり。好奇心と食欲に負けて会うことにした。
A子はやつれて老けていた。確か俺より5つ下のはずなのに。
ステーキセットを頼んで舌鼓を打ってると、A子がポツポツと話始めた。

彼氏持ちだというのは嘘と。
お見合い相手(俺)が冴えないブサだから、とっさに嘘をついたこと。
その後、B社長に「彼氏持ちの社員に無理やりお見合いさせたクズ」と悪評が立ったこと。
辞める社員が続出したこと。
A子は被害者だと慰められるのが重荷になったこと。
いたたまれなくなって退職したこと。
B社長は心を病んで会社を畳んだこと。
A子はというと、再就職先で上手くいかず、まだ結婚してないということ。
将来が不安になると悩んでいること。

話を聞いているうちにイラついてきた。
あまり饒舌じゃないけど、この時は口が止まらなかった。
「さっきから聞いていたら、あんた自分の保身ばかりじゃないか。
あれだけ多くの人生を狂わせておいて罪悪感がまるで無いのな」
「大体、俺を呼んでおきながら謝罪の一つもない。
愚痴を言ってすっきりしたから呼んだんだろ?」
「あんたみたいな部下を持ったBさんがかわいそうでならない。
Bさんに謝罪したらどうだ?」
「そんなに俺が嫌なら、事前に穏便に断ればよかったんだよ。
社会人のくせにそんなのも分からないのか?」
A子は真っ青な顔をしてた。
なんか「私のせいじゃない…」とぶつぶつ呟いてた。
とことん自分の事しか考えてないのな。

鞄を持つと「自己中なあんたと結婚しなくてよかった。断ってくれてありがとう」
と捨て台詞を吐いてレストランを出た。
そして、帰りの電車の中で気付いた。ステーキセットを完食していないことに。
もったいない事をしたなと少し後悔した。

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