木. 11月 21st, 2024
710 :名無しさん@おーぷん 2016/12/26(月) 18:15:38 ID:q0c
この間長距離をタクシーで移動したんだが、その時の運転手さんが言うには
“この仕事をしていると不思議な体験をすることはたまにある”そうで、
運転手仲間には色々怖い思いをしたことがあるらしい。
その中で、怖いだけでなくてちょっと切ない感じがして印象に残った話を投下。

その運転手をAさんとする。
Aさんはある日高齢の男忄生を乗せた。
その男忄生は乗車した時からニコニコしてて、色々世間話を振ってきた。
その男忄生、初めての孫が生まれたらしいんだ。
男忄生は早くに妻を亡くし、男手ひとつで一人娘を育て
ようやく立派な男忄生の元に嫁いで行ってやれやれ・・・と思っていたものの
結婚してもなかなか子宝に恵まれなかった。
男親には相談相手になってやることもできず、その事だけが気にかかっていた。
結婚10年が過ぎてもう半分は諦めていたところ、娘から妊娠したとの朗報が。
大事に大事にするようにと娘に話し、生まれてくる孫のことをそれはそれは楽しみにしていた。
出産予定日が近づき、連絡がくればすぐにタクシーを呼んで病院に向かうつもりで
電話の前にはすぐにわかるようにタクシー会社の番号も貼っておいた。
そしてついに連絡が来た。分娩室に入ったとの知らせ。
男忄生は電話を切るとそのまますぐにタクシー会社のダイヤルを回した。
しかし生憎その日は朝からの雪でタクシーは全て出払っていた。
事情を話し、できるだけ早く来てほしいと伝え電話を切った。
まだかまだかとタクシーを待っていると、ようやくタクシーが到着したらしい。
運転手さんは自分の孫が生まれるわけでもないのに、早く早くと急かすように走り出した。

そこまで聞いた時、Aさんの首筋に冷たい汗が流れた。
そして後部座席から「おかげ様で孫にも会えました。その節は有難うございました」と聞こえたきり
言葉と共に気配も消えたそうな。
震える手で必タヒにハンドルを握り、路肩に止めて振り返ったら
そこには誰もいなかったらしい。
711 :名無しさん@おーぷん 2016/12/26(月) 18:15:53 ID:q0c
そのAさん、半年ぐらい前の雪の日に本部から指示された住所にタクシーを向けた。
家の前に車を止めてクラクションを鳴らし待っていたが、誰も出てこない。
しばらく待ったのち、表札を確認してインターホンを鳴らしたがやっぱり出てこない。
本部に確認したが間違いでもない。
さらに電話を受けた女忄生によると娘さんが出産するらしく、行先はその総合病院だと言う。
とりあえず玄関ドアをノックしてみようと門を入りドアを叩いてみたが、やっぱり反応がない。
もう少し待っても出てこないようなら帰ろうとタクシーに引き返そうとしたが、
何故か分からないが嫌な予感と後ろ髪を引かれる思いがして引き返せなかった。
失礼かなと思いつつ、庭の方へ回り、窓を軽く叩いて名前を読んでみたがやはり反応はなく
ガラス越しにカーテンの隙間から覗いてみたら、そこに胸を押さえてもがき苦しんでいる男忄生が見えた。
すぐに救急車を呼び、救命士には娘さんが出産のために入院しているらしい病院名を伝えた。

Aさんが関わったのはここまでだったが、どうにも気になって後日病院に向かい
その日に出産した女忄生の父親が倒れているのを発見し
救急車を呼んだのは自分であること、その後が気になって参上した旨を伝えたところ
入院中の娘さんに聞きにいってくれたそうだ。
そして改めて連絡さしあげたいので、良かったら名前と連絡先を聞いてほしいと言っていると。
それでAさんはタクシー会社の電話番号と名前だけ伝えてもらったらしい。
そして男忄生が亡くなったことを聞かされた。

それから数ヶ月経って、会社へ女忄生が訪ねてきた。その男忄生の一人娘さんだった。
Aさんが発見した男忄生は心筋梗塞で、病院に到着してすぐ手術室に運ばれた。
どうにか一命をとりとめたかに思われたが、数日後急変し亡くなったらしい。
しかし手術後に意識を一旦取り戻し、孫の顔を見せることができたそうだ。
もしAさんが発見してくれなかったら、孫の顔を見ることもなく
ひとりで亡くなってたはずだと涙を流して礼を言われたらしい。

あの時の男忄生が、律義にも礼を言いたくて客となってAさんの車に乗り込んできたと言うことか。
Aさんは、消えた客の最後の言葉「有難う」の言葉を思い出し涙が止まらなかったと言う。
712 :名無しさん@おーぷん 2016/12/26(月) 18:16:12 ID:q0c
なんか切ない・・・と思った。
所々補完したが、だいたいこんな話だった。長くてすみません。