19歳の私は学内のコンパで知り合ったひとつ年下の男と付き合い始めた。
彼は一見普通そうに見えたもののこの男(実家住まい)の母親が控えめに言って相当な基地外。
二度デートして付き合うことにした三日後に「大事な息子が!年上の女にだまされてる!今すぐつれて来い!!」と大暴走して挨拶に行かされるはめになった。
一週間後に場をセッティングされ、会ったなり上から下までジロジロと嘗め回すように私を見て「地味だね」とケチをつけ、
手土産のチーズケーキを「ありがとう、でもこれキライなんだけどね」と激しいジャブ。
自分の周りの40代女性(親戚か習い事の師匠しかいなかったけど)は落ち着いた大人の女性ばかりだったので
客が来るとわかっているはずなのにTVがつけっぱなしで、むきだしで傷だらけのCDを積み上げたタワー(複数)を前に
キンキン高い作り声で「そーゆーの、チョーキライなんやぁ」っていう彼の母には驚愕した。
彼の母に違和感を覚えつつあたりさわりなく彼との付き合いを続けていた。
しかし、彼の母はこちらへ来い来いとしょっちゅう私を彼の家へ呼び出して家デートをさせ、彼と私を二人きりにはさせずに監視するようになった。
値踏みの視線もよく感じた。新しいアクセサリーとかバッグとか服とか彼より先に彼の母が気づく。お前が彼氏かというくらい気づく。値段も聞く(全部自分のバイト代で買っててプレゼントではない)
仕舞いに根掘り葉掘り、私が通っている美容院から使っている化粧品、最終的には仕送りの額まで事細かに聞いてきた。
そして同じ化粧品カウンターで同じ美容部員さんを指名、20代用の化粧水や乳液をフルで購入。同じシャンプーも揃えて息子である彼氏に「お母さんエエ匂いやろ?私子ちゃんと同じやな!匂ってもエェで!」と迫る。
なんかおかしいぞと思っていた時、彼氏が私の父が医者だということを彼の母にバラしていたことがわかった。
医者というと結構なお金持ちだと思われるかもしれないけど、私の父は研究職の公務員だったのではやっている開業医の生活とは雲泥の差。医師免許を持っているというだけで診察もしない。
(子供のころ団地の8畳間に5人で寝ていたというと驚かれる)
誤解されると嫌なので彼氏には公務員と言っていたのに、私の友達がネタ的に「私子ってお医者さんのお嬢さんなんだよ~稼げる男にならないと結婚できないよね」と言ったのでバレた。
彼氏「私子ちゃんのお父さんってお医者さんなんだよーすごいよねー」
彼母「そんなお嬢さん、うちでは貰われんやん!どないするん!」
慎重に関係を構築していたつもりだったのに脱力した。それがはっきりしてからの彼母はより私を目の敵にするようになった。
「私子ちゃんのおうちはもっとえぇもん食べてるかも知れんけどこれがうちらの精一杯なんやぁ」
「何でも買ってもらえて綺麗にしてられてえぇなぁ、私は若くで結婚してずぅっと子育てで青春なんかなんもないわ」
ハイそうなんですかそれはたいへんでしたねぇそれからどうされたんですかいいえそんなことありませんいえいえとてもとてもと人あたりよく当たり障り無く応対すればするほど
彼母の増長は続き段々実家の規模や生活ぶりにまで踏み込んでくるようになってきた。
いくらなんでも、というプライバシーのほじくりが当たり前になり、会ったこともない実家の家族を気取っているだの金持ちぶっていて温かみが無いだのと批判され、
家が大金持ちだからと決め付けて世間知らずで無知な私子へのダメ出しをする。
そこまでされてようやく私は、この人たちと将来家庭を築くことは無理なのではないかと唐突に気づいた。
彼母「実家のお母さんは普段何してるの?」
私子「本が好きなので本を読んでることが多いです。時々お勧めを送ってくれるんですよ」
彼母「えー?TVとか見ないの?」
私子「TVは父もあまり好きではないのでつけないようにしています」
彼母「専業主婦なのに!?ありえない!信じられない!」
きっかけはこんな会話だったと思う。いつでもどこでもTV(バラエティオンリー)つけっぱなしのこの人たちと一緒になったら、私は静かに音楽を聴いたり本を読んだりすることもままならないんだ。
汚部屋で寝っ転がってTVを見ながらおせんべいバリバリ食べて解決熟女(当時彼母が好きだった番組)見るのと他人の噂をすることだけが人生の楽しみの大部分になっちゃうんだ、
彼と結婚したらそういう人を『義母です』ってどこにでも紹介しなくちゃいけないんだとそのとき初めて思い至ってゾッとした。一度付き合ったらよほどのことが無い限り結婚するものかと思っていた自分も相当な馬鹿だ。
当時の私としては彼自身にはそんなに問題はないのではと思っていたので、私にベタ惚れの彼が納得しないと面倒だという思いがあった。
下手なことをして私が悪いように思われて変な噂を流されたりすると、今後の学生生活に影響が出るかもしれない。考えた結果、私が彼母に嫌われれば良かろうという結論が出た。
(今なら私が嫌なことを言われ続けていたのに聞き流していたり彼母をとめてくれなかった彼氏も問題があるとわかる)
彼母が嫌がることで、私にあまりダメージの無い効果的な方法は何だろう?と考えたときに思いついた。嘘でもかまうもんか、彼母が大っキライなお金持ちのふりをすればいい。
それからは嫌でたまらなかった、彼母に会うおうちデートの日が楽しみになった。今日もつけっぱなしのTVで都合よく何でも鑑定団がやっている。
彼母「私子ちゃんのおうちにもマイセンとかあるん?(チラッ」
私子「マイセンは少ないですねぇ、祖父が洋行したときに求めたものばかりで。今は母の好みでリモージュとかフランスものが多いです^^」
彼母「そ、そう。きっと高いんだろうね?」
私子「母に言わせるとお金は問題じゃなくて、一番いいのは好きな作家さんの作品を買って育てることみたいですよ^^工房まで行くのが面倒ですけど^^」
彼母「私子ちゃんのおうちは部屋数どれくらいあるの?」
私子「さあ……数えたことがないのでわかりませんけど(指折り数えて考え込む)、母屋だけの話ですか?離れは入れないんですよね?^^」
彼母「……母屋とか離れとかあるんだ」
私子「茶室は?入れないですよね?蔵は入れなくていいと思いますけど^^」
彼母「茶室!」
私子「落ち着きますよね^^祖母が小さいころから教えてくれたせいかも^^」
私子「さぁ?重いから好きじゃないって言っていつも預けっぱなしです^^」
彼母「成人式は着物なの?いいやつ買ってもらうんじゃないの?」
私子「いま染め屋さんに下絵を描いてもらってるところなんですウフフ、父のお宮参りも母の嫁入りも誂えた呉服屋さんなので皆張り切ってくれてて^^帯は祖母の結納の時のにします^^」
TVで皇族の方が出るとサッと座りなおす私子。そのトピックが終わるまでは背筋を伸ばして謹聴の姿勢。終わると何事も無かったかのように元に戻る。
彼母「なに?何なの?」
私子「え?ただ今上陛下のお姿がお写りになりましたので……」
彼母「だからなんなの、テレビでしょテレビ。ケッ」
私子「あ……大伯父が昭和天皇の地元への御幸の際、ご案内役を仰せつかりまして大変に名誉なことだったと常々申しておりましたのと、
恐れ多くも直に拝謁してまことに得がたいお方でありながら近しくお声をかけてくださったと申しておりましたので皇族の方々には僭越ながらお慕い申し上げております。あっ彼男くん、もう時間だから行かないと^^」
要約すると相当嫌味だけど、何日にも分けて薄めた毒をちょっとずつ送り込んでやった。自分で根掘り葉掘り聞いておきながらイライラする彼母を見て途中からどんどん楽しくなっていった。
私が今まで嫌な思いをした分、彼母もイライラしたらいいと思った。
366: 6: 2013/09/12(木) 00:58:46 ID:mKp3kyRc0
それから彼に、彼母は彼を自分の夫の代わりにしていることやバイトや友達づきあいを規制して彼の自立を妨げていることをじわじわ吹き込んでやった。
私が悪者にならないよう、慎重に言葉を選び彼を誘導して最終的に彼母と彼を対立させた。
彼母の「あの女(私その場に居たのに)と付き合いだしてからあんたは変わった!」という言葉に「成長したんだ!母親なら喜べよ!俺ばっかじゃなくて親父にかまえや!」と言い返した彼氏を見て
何となくもう大丈夫だと思い別で話し合いをして別れた。結構素直だった。
卒業して私は地元に戻り、何年もたってからふと彼の家の近所に住んでいる友達に聞くと彼母は彼を「私の小さな恋人」扱いし続けようとして粘着してウザがられていたらしい。
彼が稼ぐようになったら仲の悪い彼父と別れて二人で暮らす計画だったみたいだけど、今は彼父と彼母の二人で暮らしているとか。彼はあえて転勤のある仕事に就いたそうだ。
立場を利用して他人をいじめると、それなりに報いがあるんだと思った出来事でした。多少私が関係してる結果かもしれないけれど……
聞いてくださってありがとうございました
引用元:http://toro.2ch.net/test/read.cgi/occult/1377059954/