その1

小学校の時、唐突に新学期初の体育の授業にお気にの体操服袋を持っていこうと思い立ち、
母にそいつのありかを尋ねたものの、
「えーそんなんあったかいな」「知らん」「アイロンのところちゃう？」
とテレビに夢中で生返事。
自力で捜索することにしたが、洗面所の引き出しにも押入れにもアイロンのところにも見当たらない。
半泣きになりつつ親のタンスをごそごそしていると、「お買い得パック30枚入り云々」
と書かれたお菓子のような箱を見つけた。
とりあえず中身を見たが、あまりおいしそうでも無かったので元に戻し放置。
・・・と、突然慌てたように母が階段を上がって来る音がした。
「あっ・・・・あっ、あったん体操袋～？」
娘が明日はりきって披露しようとしていたぶーにゃんの体操袋のことなどまるで無関心だった
さっきまでの態度とは裏腹に、息を切らしうっすらと頬を赤らめ聞いてくる。
「いや・・・無いけど」
「向こうの部屋の押入れちゃうの？」
妙に別の部屋に誘導しようとしてきたので
「いやそこ探したし、無いし」と頑と撥ねつける。
しかし挙句の果てには
「じゃあお母さんが探しといてあげるわ！」
というので何だかもやもやしつつもそこは渋々引き下がった。

どうせあの箱のことだということは分かったので後で姉に聞くと
「今更もう兄弟とかいらんやろ」
との事。
体操袋は自分の机の引き出しにあった。